
【シリコンバレー=山田遼太郎】米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のクラウドコンピューティングサービスで米東部時間の13日午後、米国を中心とした大規模な障害が発生した。複数のウェブサイトで一時的に接続できなくなり、日本でもデジタル家電が動作しないといった影響が出た。AWSは障害がすでに解消したと発表した。
AWSは米アマゾン・ドット・コム傘下で、クラウドで世界シェア首位の最大手だ。AWSによると、米東部時間の午後3時前から午後6時30分すぎにかけて、米国東部リージョン(データセンターの所在地域)の複数のサービスで接続ができなかったり、遅延したりといった状態が発生した。
AWSは同午後6時37分までに問題が解消し、「全てのサービスは正常に稼働している」と発表した。サーバーを介さずにアプリなどの情報を更新する際に使う「ラムダ」と呼ぶサービスで問題が生じたと説明している。
影響は日本にも及んだ。ツイッター上では「家の照明がつかない」などの声が相次いだ。家電などをスマートフォンから操作できるようにするサービス「スイッチボット」などが一時動作しなくなったもようだ。
ウェブサイトやアプリを通したサービスの基盤としてAWSを使う企業は多く、影響は広がった。米ニューヨーク州都市交通局(MTA)が「AWSの障害により、ウェブサイトとアプリで運行状況が利用できない状況だ」とツイッターに投稿した。メディアでもAP通信などが影響を受けたとしている。
何かの練習ですかね?
知ってましたか?
日々報じられるニュースの陰で暗躍している諜報機関──彼らの動きを知ることで、世界情勢を多角的に捉えることができるだろう。国際情勢とインテリジェンスに詳しい山田敏弘氏が旬のニュースを読み解く本連載。今回は、日本のデジタル庁が導入するアマゾンのAWS(アマゾン ウェブ サービス)について深堀りする。
菅義偉首相の退陣から行われた自民党総裁選と、それに次ぐ衆議院選挙が終わった日本。政界は少し落ち着きを取り戻すことになるだろう。
菅前首相の功績としては、デジタル庁の創設がある。「デジタル敗戦」(デジタル化の失敗)したとされる日本の公的サービスにおいて、これからはデジタル庁が日本をデジタル化に導いていくことなるという。
その中でも特に大掛かりな事業が、全国の自治体がそれぞれ管理している国民のデータベースを中央で一括管理できるようにする「ガバメントクラウド」のシステムの構築だ。これにはデータを安全に保管できるサーバーが不可欠になる。そしてデジタル庁では、米アマゾンのAWS(アマゾン ウェブ サービス)が導入されることに決まった。
デジタル庁が国内ではなく米企業のシステムを導入
菅義偉首相の退陣から行われた自民党総裁選と、それに次ぐ衆議院選挙が終わった日本。政界は少し落ち着きを取り戻すことになるだろう。
菅前首相の功績としては、デジタル庁の創設がある。「デジタル敗戦」(デジタル化の失敗)したとされる日本の公的サービスにおいて、これからはデジタル庁が日本をデジタル化に導いていくことなるという。
その中でも特に大掛かりな事業が、全国の自治体がそれぞれ管理している国民のデータベースを中央で一括管理できるようにする「ガバメントクラウド」のシステムの構築だ。これにはデータを安全に保管できるサーバーが不可欠になる。そしてデジタル庁では、米アマゾンのAWS(アマゾン ウェブ サービス)が導入されることに決まった。
この決定には一部批判が出ている。データ保全を考えると、日本人のデータを外国製のサーバーに入れることにはリスクが伴うからだ。というのも、たとえばアメリカをはじめとする緊密な同盟国は、データ保全と安全保障の面から中国メーカー製のサーバーを使うことを許さない。日本も、デジタル庁で中国製を導入しない理由はそこにある。
だが、そもそもなぜ、日本メーカーのものを導入しないのか──そんな疑問が出るのは当然だろう。投入される予算の大きさもさることながら、安全保障の面でも、サーバーにある情報が相手(第三者)に渡ってしまう可能性がある。少なくとも、データにアクセスできてしまう可能性があるのだ。
かくいうアメリカも、自国の重要な機密データを扱うのに国外製品は決して導入しない。米サイト「ブルームバーグ・ガバメント」は2020年11月、以下のように報じている。
「CIA(中央情報局)は極秘で数十億ドル規模のクラウド契約を、アメリカのいくつかのクラウド企業に与えた。それらの企業は、ストレージだけでなく、データ処理、そのほか機械学習など追加サービスを今後15年にわたって米インテリジェンス組織に提供することになる」
そこで契約を獲得した企業は、「アマゾン、マイクロソフト、IBM、オラクル、グーグルの5社」であり、これら5社がアメリカに17ある情報機関のクラウドを担うことになる。
だが、そもそもなぜ、日本メーカーのものを導入しないのか──そんな疑問が出るのは当然だろう。投入される予算の大きさもさることながら、安全保障の面でも、サーバーにある情報が相手(第三者)に渡ってしまう可能性がある。少なくとも、データにアクセスできてしまう可能性があるのだ。
かくいうアメリカも、自国の重要な機密データを扱うのに国外製品は決して導入しない。米サイト「ブルームバーグ・ガバメント」は2020年11月、以下のように報じている。
「CIA(中央情報局)は極秘で数十億ドル規模のクラウド契約を、アメリカのいくつかのクラウド企業に与えた。それらの企業は、ストレージだけでなく、データ処理、そのほか機械学習など追加サービスを今後15年にわたって米インテリジェンス組織に提供することになる」
そこで契約を獲得した企業は、「アマゾン、マイクロソフト、IBM、オラクル、グーグルの5社」であり、これら5社がアメリカに17ある情報機関のクラウドを担うことになる。
言うまでもなく、機密情報などの重要な情報を扱う契約はすべてアメリカの企業と結んでいる。インテリジェンスの世界から見れば当たり前のリスク対応だ。CIAは徹底した調査を行い、アマゾンのAWSなどを選んでいる。
たしかに、こうした背景を考えると、日本が導入するAWSは信頼がおけると言えるのかもしれない。
アマゾンを使う情報機関は他にもある。英「ロイター通信」の10月26日の記事によれば、「イギリスのいくつかのスパイ機関が、アマゾンのAWSと契約したことが判明し、スパイ活動で使うデータ分析やAIの利用を強化する目的で、機密情報を扱う契約がアマゾンに与えられた」と報じている。
「通信などから情報を収集する情報機関のGCHQ(政府通信本部)は、セキュリティが強固なクラウドシステムの調達を支持し、そのシステムは、共同作戦で、GCHQと関係が深いMI5やMI6、さらにそのほかの国防省などの情報機関と共有することになる」
つまり、AWSは世界のトップクラスのスパイ機関に信頼され、セキュリティが万全であるとのお墨付きを得ている。日本政府がAWSの導入を決めるのも納得と言えそうだ。
たしかに、こうした背景を考えると、日本が導入するAWSは信頼がおけると言えるのかもしれない。
アマゾンを使う情報機関は他にもある。英「ロイター通信」の10月26日の記事によれば、「イギリスのいくつかのスパイ機関が、アマゾンのAWSと契約したことが判明し、スパイ活動で使うデータ分析やAIの利用を強化する目的で、機密情報を扱う契約がアマゾンに与えられた」と報じている。
「通信などから情報を収集する情報機関のGCHQ(政府通信本部)は、セキュリティが強固なクラウドシステムの調達を支持し、そのシステムは、共同作戦で、GCHQと関係が深いMI5やMI6、さらにそのほかの国防省などの情報機関と共有することになる」
つまり、AWSは世界のトップクラスのスパイ機関に信頼され、セキュリティが万全であるとのお墨付きを得ている。日本政府がAWSの導入を決めるのも納得と言えそうだ。