希望がなければ生きてはいけない。居場所や趣味すらない非正規の女性たちが、ホストや過剰な推し活にハマった。好きな人を応援するための資金を稼ぐために、非正規の一般女性たちが続々と風俗や街娼に走っている。よって、現在大流行する一般女性の売春は、女性から希望を奪った雇用の非正規化の副作用とも言えるのだ。犯罪の一線を悠々と越えてくる貧困の深刻な現状は、日本の貧困化が本格化した2004年の分岐点に、すべてつながってくるのである。
奨学金返済のためにパパ活
「奨学金の金額が大きすぎて、自分がどれだけの借金を抱えているのかわからない。いまの段階だと、とても返済できるとは思えない。お金が圧倒的に足りてないことだけはわかるので、稼がなきゃって意識はある。だからパパ活やってみようかなって」
茶飯(セックスなし)のみのパパ活をする藤井優花さん(仮名、21歳)は、都内の最難関私立大学3年生。誰が眺めても美人、美しいという風貌の女性で、彼女は戦略的にパパ活をする。自ら男性を検索し、自己紹介や職業、収入をチェック、自分から「お会いしたい」とメッセージを送る。お金をもらうことが目的なので、相手の年齢は重要視していない。お茶1(万円)、食事2(万円)の要求と肉体関係になることはしないことを徹底し、いまのところ月10万円程度を稼いでいる。
「パパ活は高校の友だちも、大学の友だちも、みんなやっています。高校の友だちから聞いたのがきっかけ。そのときは興味なかったけど、大学でも、何かいいバイトない?みたいな話題になると、冗談交じりでパパ活をしたいねってなる。周りの友だちがどんどん始めて、みんなやっているから私もやった。お茶するだけで1万円とか食事で2万円とか、すごく効率がいいと思った」
10数年前から入試難易度にかかわらず、大学は貧困の巣窟となっている。理由は学費の高騰と、親からの援助減少、授業優先のアルバイト収入減少で、大学昼間部の奨学金受給率は49.6%(「令和二年度学生生活調査」)、平均借入金額は324万3000円(労働者福祉中央協議会調べ)と深刻な状態となっている。
一方、現在70代の団塊の世代の国立大学授業料は当時1万2000円で、さらに彼らには消費税も携帯代も光熱費の上昇もなかった。壮絶な世代格差の側面が、安価な大学学費と税制だけで説明できる。このように貧困状態を強制するとパパ活、水商売は常識となり、性風俗や売春する女子学生も膨大に現れてくる。
学費のためにカラダを売る
「いま、大学は春休みなので、週5日~6日で出勤しています。14時~閉店24時まで、ほぼ毎日。稼いだ金額は先月75万円、先々月50万円くらい。でも、この前、風俗していることがお母さんにバレた。実家を出て、いまは一人暮らし。親とは絶縁状態なので、学費のほかに生活費が必要になった。もう休みの期間中は限界まで働くしかない。私立なので学費が年間110万円、残り2年間あって220万円必要で、時間があるときに働いて貯金したいってことでの鬼出勤です」 松本未來さん(仮名、20歳)は、地方にある中堅私立大学3年生だ。ほとんど休むことなくソープランドに出勤する。清楚な優等生風で、大学では体育会系の部活に所属(活動は土日のみ)し、グローバルビジネスの研究をしている。大学の授業期間中は土日を中心に、休み期間中はほぼすべての時間を店の個室で過ごしている。オンライン授業はソープランドの個室で受けた。 「最初は店舗型ヘルスで働きました。高校3年のとき、国立に落ちたら私立、私立に行ったら風俗やるって決めていました。それまでの男性経験は一人だけです。経験はほとんどないけど、なんとかなるって自信はありました。実際にやってみて、キツイけど、やっぱりお金もらえるのが嬉しかった。精神的にもダメージのある仕事でしたけど、お金もらえるっていうのと、お金が貯まる、大学に行くことができるっていうのがすごい、私にとって幸せだった。だから続けています」 国立大学に落ちたことで、母親に「奨学金で大学に行け」と言い渡されている。両親は正規雇用の県庁勤務で、世帯収入は1200万円を超える。しかし、両親が学費の援助を拒否したので、私立に進学先が決まった高校3年3学期に高校の教室で風俗嬢になる決意をしている。大学入学以降、中年男性に肉体を貪られる毎日だ。 「自分は何しているのだろう?って、よく思います。成人式の日は変なお客さんが多かったこともあって、すごく落ち込みました。学校の友だちとか部活の仲間とか、普通のレストランとか居酒屋とかのバイトで、なんとかやりくりしているわけじゃないですか。でも私はこうやって1日何時間も働いて、おじさんの相手して、いつも裸で全身を舐められて、何しているんだろうって。まともじゃないなーって悲しくなるときは、めっちゃあります」 彼女のような厳しい境遇は、大学生では珍しくない。両親は平均以上の所得があるのであらゆる給付奨学金、第一種奨学金は対象外であり、学生生活にかかるお金を肉体で稼がなければならない。団塊ジュニアの両親、団塊の世代の祖父母は、彼女に自分の学生時代の価値観で語る。未來さんの壮絶な苦境を何も理解していない。家族の無理解と高額な学費がのしかかり、欲望に飢えた中年男性を相手に性的サービスを提供し続ける、という悲惨な状況に陥っている。