英紙「米日、安保条約を大幅アップグレードへ…在日米軍の権限を拡大」
米国と日本が、中国の台頭に合わせて、1960年に結んだ「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(日米安保条約)」の大幅なアップグレードを進めているという。英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙が24日に報じた。在日米軍と自衛隊が有事の際、速やかに調整・対応できるように構造を再編する構えだ。 【動画】ウクライナ軍の6万円ドローンがロシア軍の中国製全地形車両を破壊
FTは、匿名の消息筋5人の話を引用して「米国のジョー・バイデン大統領と日本の岸田文雄首相が、来月10日にホワイトハウスで開かれる首脳会談で米日の作戦計画樹立や訓練強化のための在日米軍再調整計画を発表する予定」と伝えた。読売新聞も「両国の共同声明に『日米の指揮統制枠組みの見直し』が明示されるもよう」と伝えた。岸田首相は来月、米国を国賓待遇訪問する。
米日が同盟の根幹である安保条約のアップグレードを進めるのは、両国が域内安定の最大の懸念要素に挙げている中国のせいだ。FTは「特に、台湾海峡を巡る緊張感が高まり、米日両国が有機的に協力すべき必要性がさらに高まった」と伝えた。在日米軍は、1957年に公式に創設されて以降、機能や役割に大きな変化がない。現在およそ5万4000人が駐屯しているが、緊急事態が発生したらハワイのインド太平洋軍(INDOPACOM)の指揮を受けつつ敵と交戦することになっている。在日米軍は、空軍中将(三つ星の将官)である第5空軍司令官が司令官ポストを兼ねており、権限や責任は相対的に低いと評されている。また、沖縄の海兵隊、横須賀の海軍第7艦隊など、主な部隊の運用・作戦指揮権はINDOPACOMが持っている。東京からおよそ6000キロ離れている物理的距離はもちろん、19時間の時差があるせいで、有事の際の速やかな対応は難しいという指摘は多い。
こうした理由で日本は長らく、米国に対して「在日米軍司令官に大将(四つ星)を任命し、もっと多くの作戦権限を持たせてほしい」と要求してきた。読売新聞は「指揮権はインド太平洋軍に残しつつ、同軍の下で在日米軍の司令部の権限を強化する方向」「日米合同の演習や訓練の計画立案、自衛隊の統合作戦司令部との調整や情報共有、物資の調達などの権限を与える案がある」と報じた。米太平洋艦隊と連携した常設の「合同タスクフォース(機動部隊)」を立ち上げ、艦隊の指揮官である四つ星の将官が日本により多く滞在できるようにする案も浮上している。米戦略国際問題研究所(CSIS)のクリストファー・ジョンストン日本部長は、FTの取材に対し「米日同盟がファイト・トゥナイト(Fight Tonight・即時戦闘態勢)の精神を有する韓米同盟のように進化すれば、地域内の抑止力向上にかなり寄与するだろう」と語った。韓国軍と米軍は韓米連合司令部という一つの部隊があり、指揮体系が一元化されている。戦時に作戦統制権を行使する韓米連合司令官兼在韓米軍司令官は大将クラスだ。
今年5月にはサミュエル・パパロ海軍大将がインド太平洋軍の司令官に就任し、米日2プラス2(外交・防衛担当閣僚)会合も予定されており、首脳会談を契機として再調整の議論に弾みが付くと予想されている。日本は今年、陸上・海上・航空自衛隊を一元指揮する統合司令部を設置する予定で、2025年からは米国産のトマホーク巡航ミサイル400発を配備すると決めるなど、防御に重点を置いていた「盾」役から脱して「反撃能力」を確保することに力を入れている。
ワシントン=金隠仲(キム・ウンジュン)特派員
ロシアはNATOとの全面戦争に備えていて、それは当初想定されていたよりも近い ── 米シンクタンクが報告(海外)
ロシアは北大西洋条約機構(NATO)との「大規模な」戦争に向けた準備を強化していると、アメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)が指摘した。 ISWによると、ロシアの経済復興に向けた取り組みはウクライナとの戦いのためだけではない。 ロシアはNATOとの戦争 ── 思ったよりも早く起こるかもしれない ── に備えている可能性があるという。 ロシアのプーチン大統領がロシア経済の復興に力を入れているのは、ウクライナ戦争の資金繰りのためだけではないと戦争研究所(ISW)が指摘した。 「ロシアの金融、経済、軍事に関するいくつかの指標は、ロシアがNATOとの大規模な通常戦争の準備を進めていることを示唆している。差し迫ってはいないが、西側諸国の一部アナリストが当初想定していたよりも短いタイムラインで起きる可能性が高い」とISWは3月20日付のレポートに書いている。 ISWは、プーチン大統領が3月19日に国会の各政党党首と行った会談を引用している。この直前には、プーチン大統領が17日に行われた5回目の大統領選で地滑り的な勝利を収めていた。 19日の会談で、プーチン大統領は5期目となる自身の任期中に注力したい分野について話し合った。最も重要なのは、「人々を救う」ことと「家族を助ける」ことだと大統領は語ったという。 「もちろん、これらはいずれも経済発展に基づいてのみ可能だ」とプーチン大統領は19日に話した。 「これは我が国の発展にとって重要な問題だ。技術的主権と社会発展に関するその他全ての問題が解決されなければならない」 プーチン大統領はまた、ロシアの裕福なエリート層を攻撃し、議員たちに「企業や政党の利益」に誘導されないよう呼びかけた。 ISWによると、プーチン大統領の発言は自身の政治基盤の一部で、裕福な元治安関係者「シロビキ」との関係を危険にさらす意思があることを示唆している。これはロシアのエリート層に対して、国の財政安定のためには彼らも「多少の痛み」を感じなければならないというプーチン大統領の"シグナル"なのだろうとISWは指摘している。 「ロシアの経済と財政を安定させるための条件を整えようとするプーチン大統領の試みは、ウクライナでの長引く戦争だけでなく、将来起こりうるNATOとの大規模な紛争に向けたロシアの財政的、国内的準備の一環である可能性が高い」とISWは20日付のレポートに書いている。 ロシアとNATOとの戦争が迫っているとアナリストが指摘するのは、これが初めてではない。 エストニアの情報機関は2月、ロシアが「西側諸国との対決」に備えていると報告している。 ロイターによると、「ロシアは長期的な対決の道を選んだ」と同機関を率いるカウポ・ロジン(Kaupo Rosin)氏は報道陣に語った。 報告書には「クレムリンは恐らく、今後10年以内にNATOと衝突する可能性を予測している」とある。