日本の新聞がなくなる日…「この20年で2000万部激減」もう止められない深刻事態
ローカルテレビ局の売上が1000億円減少
地方のテレビ会社(ローカルテレビ局)も地方紙と同様に県内人口の減少に苦しんでいる。テレビ業界というと華やかなイメージを持ちがちだが、ローカルテレビ局の現状は決して楽ではない。 インターネットが社会インフラとして定着し、ユーチューブなどで誰もが“Myテレビ局”を開設できるようになり“テレビ離れ”は進んだ。映画などのサブスクリプションサービスも定着して、いまや映像情報は日常に溢れに溢れている。早送りしながら見るという「倍速視聴」という言葉が話題となっているが、映像を選べる時代となってお仕着せのプログラムで放送するテレビを見ない人が増えている。 テレビの場合、さまざまな年代を対象にせざるを得ないこともあって、新聞と同じく若者を中心とした“テレビ離れ”が著しくなっている。見たくなる番組が限られているためだ。 総務省の資料によれば2020年時点において平日1日15分以上テレビを見る割合(平均)は、10代男性が54%、20代男性は49%に過ぎない。若者の“テレビ離れ”はテレビ広告市場の縮小につながる。2020年の広告費はインターネットが2兆2000億円に対し、地上波テレビは1兆5000億円でかなり水をあけられているのだ。 それは会社全体の収支の悪化となって現れる。総務省の資料によれば、全国114局のローカルテレビ局の売上高は、2014年度の約7055億円から、2020年度には約5933億円に落ち込んだ。単純に平均すれば、1局あたり約10億円の減収である。営業利益は2014年度の約575億円から2020年度には約165億円に落ち込み、1社あたり約5億円から1億円ほどになった。 ローカルテレビ局は、地元の有力企業やキー局、新聞社の資本が多く投入され、それらとの深い結びつきによって成り立っているため、現時点で相次いで倒産するといった事態に追い込まれているわけではない。 しかも、キー局が作った番組をローカル局が放送すると、その番組のスポンサーがキー局に支払ったCM費の一部を得られる仕組みとなっている。キー局にとってローカルテレビ局は全国ネットークの生命線であるためだ。全国ネットワークを構築することで、自動車や生活必需品、化粧品といったナショナルクライアントからの広告額を高く維持できている面があり、こうしたビジネスモデルとなっているのである。 だが、先述したようにインターネットや動画配信の普及などによって娯楽が多様化しており、キー局も収入減少や視聴率の低下に悪戦苦闘している。今後はキー局の広告収入のさらなる落ち込みが予想される。
このため、ローカル局も自前の広告収入などを増やす必要性に迫られているのだが、人口減少によって地域経済の低迷が顕著になり、自前で広告収入を増やすことは容易でない。数年以内に債務超過に陥るローカル局が出かねないとの見方もある。局を集約しても問題解決しない
ローカルテレビ局として頭が痛いのは、収入が低落する見込みの一方でコスト増が待ち構えていることだ。十数年すれば放送設備の更新が必要となってくるが、それが経営の重荷になってきているのである。 こうした状況に対して、総務省は「マスメディア集中排除原則」(一事業者による複数の放送局の経営を禁じている原則)など、民放を規制してきた根幹のルールを大胆に転換することで対応する方針だ。 原則各県ごとに分かれているローカルテレビ局を集約すれば、それぞれに必要だった設備費用は軽減される。こうしたコスト削減で、ローカルテレビ局の経営立て直しを促す狙いである。 しかしながら、ローカルテレビ局を集約することで事態がすべて打開できるわけではない。収入が増えるところばかりとは限らないからだ。 ローカルCMの場合、当該県のみで事業展開している地元企業が広告を出していることが多く、放送エリアの拡大によってこうしたスポンサー企業が求める商圏とのミスマッチが起こるとローカルCMそのものの出稿量減少となりかねないためだ。だからといって、苦し紛れにローカルCM料金のダンピングに走ればローカルテレビ局同士での価格競争が始まり、経営は一気に揺らぎ始める。 ナショナルクライアントからの広告出稿にしても、仮にローカルテレビ局が統合によって放送エリアを3県に拡大したとしても、それまでの3県分を足し合わせた広告額を支払い続ける保証はない。むしろ、減らす方向へと行くだろう。 人口減少によるテレビ視聴者数の減少という根本的な減収要因が横たわる以上、ローカルテレビ局の抱える危機的状況は解消し得ないのである。 そもそも、地元資本が複雑に入り組んでいるローカルテレビ局の場合、経営統合すら一筋縄ではいきそうにない。とはいえ、物理的な境界を消滅させたインターネットの登場の前に、都道府県域にとらわれるローカルテレビ局の限界は明らかである。家庭用ビデオの普及と動画配信サービスの急伸で視聴者のテレビライフは激変した。 地方紙やローカルテレビ局は地域に密着したニュースを掘り起こし、地方行政の監視機能を果たしてきただけに、もし、その存在がなくなったり、弱体化したりすることになったなら、地域社会に及ぶ弊害は限りなく大きくなる。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。