国際刑事裁判所 ネタニヤフ首相などに逮捕状 外交活動制限も

国際刑事裁判所はガザ地区での戦闘をめぐりイスラエルのネタニヤフ首相などに戦争犯罪や人道に対する犯罪の疑いで逮捕状を出しました。今後、外交活動などが制限されることも想定され、ネタニヤフ首相は強く反発しています。

オランダのハーグにあるICC=国際刑事裁判所は21日、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相、それに、イスラム組織ハマスの軍事部門、カッサム旅団のデイフ司令官の3人に逮捕状を出したことを明らかにしました。

イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相については、手段として飢餓を利用し戦争犯罪などに関わった合理的な根拠があるとしています。

ハマスのデイフ司令官についてはイスラエル軍は死亡したと発表していますが、ICCは死亡を判断できていないとしていて、イスラエルに対する襲撃で民間人を殺害し、人道に対する犯罪などに関わったとしています。

イスラエルと同盟関係にあるアメリカはICCに加盟していませんが、逮捕状が出たことで日本を含む124の国や地域を訪問した場合、逮捕される可能性があり、今後、外交活動などが制限されることも想定されます。

イスラエルメディアなどはネタニヤフ首相が国際的に孤立することで、停戦に向けた協議が困難になる可能性があると報じています。

ネタニヤフ首相は声明で「テロリズムから自国を守るという民主主義国家の当然の権利を侵害する道徳的に破たんした行為だ」などと強く反発しています。

そのうえで「いかなる理不尽な反イスラエルの決定もわが国の防衛を妨げることはない。圧力には屈しない」としてガザ地区での軍事作戦を続ける考えを改めて強調しました。

主任検察官「国際人道法は守られるべき」

ICCの検察局のカーン主任検察官は声明を発表し「私たちはイスラエルとパレスチナの国際犯罪の犠牲者に意識を向けるべきだ。どのような状況でも国際人道法は守られるべきだ」としています。

そして「ガザ地区やヨルダン川西岸で国際犯罪の疑いがある行為が拡大し続けていることを深く懸念している」とした上で、今後も捜査を続け、責任を追及する可能性についても言及しました。

アメリカ・ホワイトハウス報道官「根本的に拒否する」

アメリカ・ホワイトハウスのジャンピエール報道官は21日、記者会見で「われわれは逮捕状を出した裁判所の決定を根本的に拒否する。検察官が逮捕状を急いで請求したことやこの決定につながった手続き上の過ちを深く懸念している」と非難しました。

そのうえで、共和党の一部の上院議員から国際刑事裁判所に対して制裁を科すべきという声があがっていることについては、「イスラエルなどと今後の対応を協議している」と述べました。

ICCによる逮捕状とは

 

ICC=国際刑事裁判所には日本やパレスチナ暫定自治政府など124の国や地域が加盟し、所長は日本人の赤根智子氏がつとめています。

加盟する国や地域は、ICCから逮捕状が出されている人物が域内にいた場合、身柄を拘束して裁判所に引き渡す義務を負います。

イスラエルやロシア、それにアメリカや中国などは加盟しておらず、逮捕状が出された人物がこれらの国にいる場合、実際に逮捕される可能性は極めて低いのが実情です。

ただ、ICCに加盟している国や地域への渡航は難しくなり、政府関係者の場合には外交活動などが制限される事態も想定されます。

一方で、ことし9月には、逮捕状が出されているロシアのプーチン大統領がICC加盟国のモンゴルを訪問しましたが、モンゴル政府は逮捕しませんでした。

モンゴルにとってロシアは重要な貿易相手国で、両国関係を重視したものとみられていますが、ICCの関係者は、加盟国であっても逮捕されずに訪問できるという誤った前例になるとして、懸念を強めています。

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