国内の労働力不足さらに深刻化 生産年齢人口、昨年より22万人減少
国内労働力の減少が深刻化している。総務省が14日に公表した24年10月1日現在の人口推計(年齢別・都道府県別)によると、15~64歳の生産年齢人口は7323万人で、前の年の同じ時期に比べ22万人減少した。総人口がピークアウトした08年からの16年間で大阪府の人口に近い857万人の労働力が失われた格好だ。特に地方は生産年齢人口の減少が急速で、労働力の争奪戦に一段と拍車がかかる可能性がある。
地方の窮状が浮き彫りに
その他の年齢区分別人口は、0~14歳の年少人口1383万人(前年比34万人減)、65~74歳の前期高齢人口1547万人(同68万人減)、75歳以上の後期高齢人口2078万人(70万人増)という状況。総人口は1億2380万人(55万人減)となっている。 25年は団塊世代の全員が後期高齢者に移行するため、シニア労働力として期待される前期高齢者が大幅に減少する見通し。これに伴う労働供給力のさらなる低下は必至だ。 この傾向は高齢化が進む地方ほど色濃い。24年の生産年齢人口が08年比で2割以上減少した自治体は、秋田県(30.5%減)、青森県(27.3%減)、高知県(24.8%減)など15県にのぼる。こうした地方を中心に労働需給が年々悪化している状況だ。24年の有効求人倍率が全国平均(1.25倍)を上回ったのは、ほとんどが7大都市圏を外れる地方県となっている。コロナ明けの23年に比べやや落ち着いてきたとはいえ、福井県(1.9倍)、山口県(1.7倍)、香川県(1.6倍)などは極端にタイトな労働需給環境がほぼ常態化している。 このことは全国的に人手不足の顕著な建設、宿泊・飲食、運輸などの業種にマイナスインパクトをもたらしているが、今後は食品を含む製造業への影響加速が懸念される。90年代以降、生産拠点の海外移転が進んだとはいえ、製造業は依然として地方経済の中心的役割を担っている。特に国内生産にウエートを置く食品はその傾向が強い。経済産業省の23年経済構造実態調査によると、食品製造業の従業員数は国内製造業全体の15.9%を占めている。 他の製造業が空洞化に向かう中、地方の雇用基盤として存在感を高めてきた格好だが、急速な労働供給力の低下を受け、持続性の確保が難しくなりつつある。国内製造基盤を維持し、将来性の高い輸出に経営資源を振り向けていくためにも、機械化・システム化などによる生産性の向上が急がれるところだ。