文部科学省は4日、次期学習指導要領に、障害に起因する困難を解消するための「合理的配慮」の必要性を明記する方針を明らかにした。子どもの障害に応じたきめ細かい指導を学校に促す狙いがある。通常学級に在籍して一部の授業を別室で受ける「通級」の児童生徒については、柔軟に教育課程を組めるようにする。
障害者差別解消法は合理的配慮の提供を学校や自治体にも義務づけている。現行の指導要領も障害のある子どもへの指導について内容や方法の工夫を組織的・計画的に行うよう求めているが、文科省は「十分ではない状況も見受けられる」と指摘。次期指導要領では合理的配慮という文言を初めて盛り込み、配慮の内容に関して、子ども本人や保護者と学校・自治体による建設的な対話の重要性も明示する。
暴れる児童を羽交い絞め、暴行罪に問われた37歳男性教師…違法な体罰か「懲戒権」の範囲内か
暴れる児童を押さえるために羽交い締めにした教諭の行為が暴行罪にあたるかどうかが争われた刑事裁判の判決が11日、広島地裁福山支部で言い渡される。検察側は学校教育法が認める「懲戒権」を逸脱し、違法な体罰だと主張するのに対し、教諭側は懲戒権の範囲内で指導にあたるとして無罪を求めている。(福山支局 佐藤行彦)
広島地裁福山支部で11日に判決
起訴状では、広島県福山市立小に勤務する男性教諭(37)は昨年5月10日、6年生だった男子児童(当時11歳)を後ろから羽交い締めにする暴行を加えたとしている。
市教育委員会は学校側が行った聞き取り調査結果などを踏まえ、「体罰には該当しない」と判断したが、男児の保護者は警察に被害届を提出した。その後、男性教諭は略式起訴され、同年12月に福山簡裁から罰金10万円の略式命令を受けたが、不服として正式裁判を申し立てた。
学校教育法は体罰を禁止する一方で、教育上必要な場合は教職員が児童・生徒に懲戒を加えることを認める。公判では、男児を注意しようと腕をつかんで押さえたが、暴れたために羽交い締めにした男性教諭の行為が、懲戒権の範囲内かどうか、正当防衛にあたるかが主な争点になった。
公判で検察側は、男児が痛がっていたことや、大きな体格差があったことなどを挙げ、「羽交い締めは過度な有形力の行使で、懲戒権の範囲を逸脱している」と指摘。「被害者への積極的な加害意思が認められる」などとして正当防衛の成立も否定し、罰金20万円を求刑した。
これに対し、教諭側は「男児を落ち着かせて指導するための正当な行為で、懲戒権の範囲内だ」と主張。「暴れる児童から身を守る必要もあった」と正当防衛にもあたるとし、無罪を求めた。その上で、「これが暴行と捉えられれば教育現場が萎縮(いしゅく)する」と訴えた。
◆暴行罪=他人に対して不法な有形力(物理的な攻撃)を加え、結果としてけがを負わせなかった場合に成立する。法定刑は「2年以下の拘禁刑」「30万円以下の罰金」「拘留」「科料」のいずれかと規定されている。けがをさせた場合は傷害罪になる。
線引き過去にも裁判に、文科省が2度通知
体罰と正当な懲戒との線引きについて、文部科学省は2007年と13年に通知で考え方を示している。
通知では、「個々の事案ごとに判断する」ことを前提とした上で、「肉体的苦痛を与えるものは体罰に該当する」と指摘。指導の中で「ほおをつねる」「突き飛ばして転倒させる」などの行為を体罰と例示する一方、「放課後に居残りさせる」などは懲戒の範囲内としている。
また、児童・生徒からの暴力行為に対する防御のための正当防衛などは体罰から除外するとし、「反抗して教員の足を蹴った児童の背後に回り、体をきつく押さえる」などの行為は体罰ではないとした。
線引きを巡っては、過去にも裁判で争われたケースがある。
茨城県の中学校で生徒の言動をたしなめるため、拳で数回頭をたたき、暴行罪に問われた男性教員に対し、東京高裁は1981年に「外形的には有形力の行使だが、教師に認められた正当な懲戒権の行使だった」として無罪を言い渡した。一方、愛知県の私立高校で、野球部の練習中に部員を蹴るなどして暴行罪に問われた男性監督に対し、名古屋地裁岡崎支部は2015年、「教育上必要な懲戒権の範囲を逸脱していた」として罰金2万円の有罪判決を出した。