米国最大の都市ニューヨークで異例ずくめの市長が誕生する。初のイスラム教徒で初の南アジア系、ミレニアル世代(1980年代前半~90年代半ば生まれ)が市政を担うのも初めてだ。資本主義を「好きではない」と公言し、富裕層への増税を訴える左派のスターの台頭に、世界金融の中心ウォール街は身構える。
【図でわかりやすく】ニューヨーク市長選の構図
市長選に出馬表明した1年前は、ほぼ無名の存在だった。「私たちに手の届く都市」をスローガンに、看板政策として家賃の値上げ凍結や保育無償化などを掲げ、格差社会に強い不満を持つ若いニューヨーカーたちに浸透。洗練されたソーシャルメディア戦略も成功し、支持率1%台からの番狂わせを演じた。
アフリカ東部ウガンダで生まれた。インド系の両親は大学教授と映画監督で、本人は7歳でニューヨークへ移住した後も「恵まれた環境」で育ったと振り返る。
東部の名門ボウディン大卒業後は「ミスター・カルダモン」名義でラッパーとして活動した時期もある。2020年の州下院選で初当選。政治の師とあおぐのは、16年大統領選の民主党候補指名争いで旋風を巻き起こした革新派のサンダース上院議員だ。
アーティストでシリア系の妻ラマ・ドワジさんとは、同世代の定番である出会い系アプリで知り合い、今年初めに挙式した。1ベッドルームの平均家賃が4000ドルを超すニューヨーク市で、家賃2300ドルの部屋に暮らす。
ニューヨーク市長を大統領に次ぐ「米国で2番目に大変な職」と称したのは、公民権運動やベトナム反戦運動に揺れた60~70年代に市長を務めたジョン・リンゼイだった。来年1月の就任後はトランプ大統領と対峙(たいじ)し、9月には米同時多発テロから25年の節目を迎える。分断と対立が激化する米社会に「グラウンド・ゼロ」から発するメッセージにも注目が集まる。【ニューヨーク八田浩輔】