高校英語、文法偏重からの脱却へ改善案 科目名変更など
学習指導要領改訂に向けた中教審教育課程部会の外国語ワーキンググループ(WG)の第5回会合が12月16日に開かれ、高校科目の在り方について各委員が意見を交わした。高校の英語では、文法の解説と問題演習を中心とした授業が行われている現状があることを踏まえ、発信力強化を図るとして、文部科学省から現行の「英語コミュニケーション」「論理・表現」の科目名を見直す改善案などが提示された。これを踏まえ、委員からは「名前を変えただけでは変わらない」との指摘が相次いだ。
発信力強化に向け、科目名変更を提案
高校の外国語では、前回の学習指導要領改訂時に必修科目の「英語コミュニケーションⅠ」、選択科目の「英語コミュニケーションⅡ・Ⅲ」を新設。また、英語学習の5領域のうち「話すこと」「書くこと」を中心に発信力強化を図るため、スピーチやプレゼンテーション、ディベート、ディスカッション、まとまりのある文章を書くことなどを扱う選択科目として「論理・表現Ⅰ~Ⅲ」を盛り込んだ。
それにより指導の改善や英語力向上に一定の進捗(しんちょく)が見られる一方、話すことや書くことといった発信領域での課題は残っている。加えて、留学生の増加や英語でのビジネスコミュニケーションができる人材を求める企業の要望があるとして、文科省は高校までの英語教育について、総合的な英語力向上と発信力強化が求められている状況だと説明した。
こうした現状を踏まえ、「英語コミュニケーション」「論理・表現」の両科目の趣旨を明示するため、文科省から両科目の名称を見直す案が示された。「英語コミュニケーション」は総合的な英語力向上を図るという趣旨を明らかにすることから、科目名を「英語コミュニケーション(5領域総合)」(仮称)に変更する案を示した。
また「論理・表現」では、書く・話すなどの活動を通じて、英語での発信力強化を図る趣旨であることを示すため、科目名を「英語コミュニケーション(スピーキング・ライティング)」(仮称)に見直すとした。
文科省の担当者によれば、現行の「英語コミュニケーション」では、教材に難しい語彙(ごい)や文法が含まれている場合があり、読んだり聞いたりすることを基に話したり書いたりするといった「領域統合」が十分に行われていないと説明。そのため、「英語コミュニケーション(5領域総合)」(仮称)への改善により、5領域を総合的に扱いつつ、受容と発信の領域統合を一層重視する科目として内容の改善を図る案を提示した。
また、現行の「論理・表現」では、授業で活動を通した英語使用の機会が十分に与えられておらず、科目の履修に沿った指導が十分に行われていない実態があると説明。そこで「英語コミュニケーション(スピーキング・ライティング)」(仮称)では、表現などを工夫しながら幅広い話題について発信できることや、流ちょう性を高めることを重視する。文法事項では発言領域の活動に必要な項目を扱う方針を継続し、「論理の構成や展開」の扱いを充実させる。
主な活動としては、スピーチやプレゼンテーション、ディベート、ディスカッションに加えて「日常的な会話」を行い、会話を継続させたり、発展させたりする力の育成を扱うなどの見直し案が提示された。
「学習過程に焦点化した授業を」
こうした改善案を踏まえ、江原美明委員(武蔵野大学教育学部教育学科特任教授)が高校科目の方向性について発表を行った。
高校教員の経験もある江原委員は、高校での英語授業の課題として「扱う内容が非常に多く、どうしても教科書をカバーしようということに意識がいくという現状がある」と述べ、本来であれば話すこと・書くことに特化するはずの論理・表現が、文法中心の指導・授業になりがちで、発信技能に焦点化した指導が弱いことを強調した。
加えて高校特有の事情として「進路実現が大きな使命である」と説明。所属先大学の学生に英語教育への意見を尋ねたところ、「受験勉強のための英語と実際に使うための英語に差がなくなるといい」「文法も大事であるが、活動を増やした授業も良い」「教科書だけの学習ではなく、使える英語を指導するための授業展開の仕方」などの要望が挙がったという。
江原委員は「高校にふさわしい指導をという教員の思いが、結果として内容過多、難易度が高めな設定の授業になっていることも考えられる」と述べ、学習指導要領改訂にあたっては、実社会で役立つ英語を求める生徒の思いをくみつつ「英語力の基盤となる学習過程に焦点化した授業」という視点の重要性を強調した。
その上で、大学生や高校教員へのリサーチを踏まえ、高校英語では「文構造を捉えながら英文の意味を確実に理解する」「意味を考えながら音読する」「意味と文法を意識する」などの学習過程が必要となるものの、実際にはできていないという課題があると述べた。
委員からは「科目名を変えるだけでは発展は困難」と指摘
これらを踏まえた高校の在り方を巡る議論では、委員から科目名の変更に関する意見が相次いだ。
亘理陽一委員(中京大学国際学部教授)は「科目に技能名をカッコ書きで表記することが本当にいいのか、慎重に考えたいところ」と懸念。「英語コミュニケーション(スピーキング・ライティング)」と表記することで「『英語コミュニケーション(5領域総合)』の方は受容技能中心でやってもいいというメッセージになってしまうのではないか」と指摘した。
加えて、話すことや聞くことを重視した「オーラル・コミュニケーション」の授業が行われていた時代であっても、「文法の授業になっていて、全くオーラル・コミュニケーションにはならなかった。そもそも名前でどうにかできるというのは無理だと歴史が証明している」と強調。それに代わる方向性として「例えば『表現実践』といった科目名の方が、むしろ(現行の)『論理・表現』でやろうとしていた考え方を、より打ち出せるのではないか」と提案した。
臼倉美里委員(東京学芸大学教育学部准教授)も同様に、「残念ながら科目名を変えただけでは、現場で使われる教科書や授業がドラスチックに発展することはなかなか難しいと分かっている」と指摘。加えて、科目名を変更するだけでなく「内容に関してもきちんと明記をする。コンセプトを実現するための明記が必要だと思う」と主張した。
