加齢によって脳が一夜にして変わってしまうことはまずない。だが、思い出すのに時間がかかるようになった、注意が散漫になったなど、老化の兆しは徐々に現れる。多くの人が本当に知りたいのは、そうした認知機能の衰えが起きるかどうかでなく、衰えを遅らせる方法があるのかどうかだ。
短期的な記憶力や認知機能を鍛えるには、頭を使うゲームや難解なクロスワードパズルがよいという話がよく出る。しかし最近の研究が、認知機能の低下を食い止めるのに最良の方法の1つを示唆している。それは、使える言語を増やすことだ。(参考記事:「クロスワードパズルは本当に脳にいいのか、認知症を防ぐ実力は」)
「多言語社会での暮らしが、加齢に伴う認知機能や生活機能の衰えを実際に遅らせていることが明らかになりました」と、スペイン、バスク認知・脳・言語センターの心理学者で、今回の研究の筆頭著者であるルシア・アモルソ氏は話す。
「私たちはみな老いていきます。そして年を重ねるにつれ認知機能を失い、やがて自立も失っていきます」(参考記事:「脳は9・32・66・83歳で急変すると判明、何がどう変わるのか」)
研究によれば、複数の言語を使うと脳のネットワークが常に鍛えられ、強化される。さらに、多様な環境や文化に身を置いて、そのネットワークの“筋肉”を鍛えれば、効果は一層強まるようだという。
「大切なのは、日常生活の中で実際に言語を使うことなのです」とアモルソ氏は語る。「今回わかった効果は、現実の場面で言語を使うことに由来します」
研究からは、集団レベルで見れば、母語とは別の言語を話すと認知機能の低下が緩やかになる可能性があると示された。だが個人レベルに落とし込めば、よりシンプルなものが示唆される。新たな言語を学び、話し、それを使って生活するのは、健やかに年を取るための最も身近な手段の1つなのだ。そのわけと効果を見てみよう。