
マイナンバー制度と称して、全国民に強制される生涯不変の番号を多分野で活用するような番号制度がこの10月から通知され来年1月から運用開始となるようです。
こういう強制的な一括管理番号という番号制度はどこの国も実施していないというのが事実のようです。システムバグを危惧する意見も既にでておりますが、何か間違いがあった場合とてつもない影響がでることが予測されますし、そもそも情報を集約するリスクを犯してまで実行するべきことなのか疑問ですね。だからどの国も実行していないとも言えますが。
◆NHKは「先進国で番号制度がないのは日本だけ」と言うが
2015年4月21日、NHKは「NEWS WEB」の「深知り」のコーナーにて「マイナンバー制度 準備どこまで?」と題してマイナンバー制度を扱った。
その中でNHKの解説委員は「番号制度が先進国の中で入っていないのは日本ぐらいのもの」との発言をした。解説委員が言った番号制度は、マイナンバーのように税や社会保障など他分野で共通に使う番号を利用する制度のことであろう。しかし、これは間違いだ。
そもそも番号制度にも色々ある。1つは、税だけに使う番号や、社会保障だけに使う番号など用途を限定した番号制度。もう1つは、1つの番号を税や社会保障など様々な分野に共通に使うもの。日本の住民票コードや基礎年金番号、健康保険の記号番号、所得税の整理番号などは前者である。用途限定番号による制度も含めると、日本にも既に番号制度があることになる。一方、マイナンバー制度は後者であり、10月までは「番号制度はまだない」ことになる。
NHKの解説委員は、この程度のことは知っているであろうから「先進国で番号制度がないのは日本だけ」の番号が、この用途限定番号を指しているとは到底考えられない。解説委員の発言の趣旨は「共通番号制度がないのは日本だけ」ということで間違いないであろう。
◆ イギリスにもドイツにもフランスにもマイナンバーのような共通番号制度は存在しない
しかし、「先進国の中で共通番号を入れていないのは日本だけ」は事実ではない。
イギリスは、マイナンバーのような共通番号制度を創設しようと法を通し、具体的な準備まで進めていたのだが、制度廃止を唱える政権の誕生により実現することはなかった。
またドイツには納税者番号はあるが共通番号制度はない。
フランスには社会保障番号はあるが共通番号としての利用をしないというのが国の方針となっている。
言うまでもないことだが、イギリスもドイツもフランスもG7の一員であり先進国である。NHKの解説委員は、イギリスやドイツ、フランスの状況を知らずに、調べもせずに、政府の説明を鵜呑みにしているだけなのだろうか。
◆ 政府の「すり替え」とNHK
先に述べたような用途限定番号まで含めるなら「先進国にはみな番号制度がある」は、おそらく間違いではないだろう。しかし、マイナンバーのような共通番号にまで話を広げるなら、持たない先進国も多数存在するのだ。
これまで政府は「先進国にはみな番号制度がある」という事実を、「先進国にはみなマイナンバーのような番号がある」という「ウソ」にすり替えてきた。
NHKが、この「すり替え」を承知したうえで、「ウソ」を報じているのなら悪質極まりないと言わざるを得ない。しかし、私は「単に無知なだけ」と信じたい。
◆ むしろ「G7の中にマイナンバーのような番号制度のある国はまだない」が正解
なおG7について見てみると、アメリカでは社会保障番号(SSN)が民間も含め様々な分野で利用されており、カナダでも社会保障番号が税務など多分野で使われている。ただし、どちらも番号の取得は国民側の任意であり、日本のような強制ではない。
一方、イタリアでは納税者番号が社会保障の分野でも利用されているが、日本のような生涯不変の番号ではない。
日本のマイナンバーもこれら3ヶ国に加えれば共通番号制度を採用しているのはG7では多数派にはなる。しかし、「先進国で導入していないのは日本だけ」が事実に反しているのは何ら変わらない。
むしろ日本のような全国民に強制される生涯不変の番号を多分野で活用するような番号制度を採用している国は、G7には「まだない」が事実である。
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